さて振り返ってみますと、私がそもそも更年期医療に取り組むきっかけは米国バージニア大学医学部の内分泌部門でホルモンの作用機序の研究していた頃にさかのぼります。
大阪大学大学院医学系研究科でのホルモンの作用機序の研究で医学博士号を取得したのち、直ちに米国のバージニア大学医学部内分泌部門の研究員としてロバートMマックロード教授の指導のもと研究に従事しました。留学先のバージニア大学はトーマス・ジェファーソン(アメリカ合衆国第3代大統領)が創設した名門州立大学で、キャンパスは世界遺産になっております。バージニア州のシャーロッツビルにあり、その町は「バージニア大学の城下町」といった感じの治安のよい静かな学園都市でした。
町のカフェテリアやショッピングセンターで会う、およそ80歳を越すと思われる女性達がとても元気そうで、しかも背骨が曲がっていない人達が、日本の老婦人達に比べてことさら多いことに気づき、とても不思議でした。最初は人種の違いかと思っていました。ある時恩師マックロード教授が主催するパーティでその疑問を尋ねてみました。教授は「それはきっと女性ホルモン補充療法のためでしょう」と、何の躊躇もせずに、自明の理と言わんばかりの即答で返ってきました。その即答に驚くとともに、なるほどと納得したことを今でも鮮明に覚えています。当然ながら、アメリカではその頃にはすでに女性ホルモン補充療法がかなり普及し、骨粗鬆症の予防効果に関する学術的な成果も報告されつつありましたが、その成果を現実の社会の中で実感したのはその時がはじめてでした。
当然ながら、アメリカではその頃にはすでに女性ホルモン補充療法がかなり普及し、骨粗鬆症の予防効果に関する学術的な成果も報告されつつありましたが、その成果を現実の社会の中で実感したのはその時がはじめてでした。アメリカで実感した「ホルモン療法による女性の心身の若返り」の実態を教訓に、帰国後私自身「安全で有効なホルモン療法」を中軸に更年期医療にも積極的に取り組んで参りました。