こんにちは。副院長です。
今日はホームページのリニューアルにあわせて、ホームページ内に新たに登場したワード、「世界水準の女性医療」について、私たちの考えをお話ししようと思います。
初回投稿で院長である父の専門分野が女性ホルモンとそれに関わる病気や、女性の病気の予防・生活の質の改善などを扱う専門分野である「女性医学・女性のヘルスケア」であることはお話ししました。
私の専門も父と同じく「女性医学・女性のヘルスケア」です。岐阜県で最後に勤務した岐阜大学では、女性ホルモンの関わる病気に対する治療指針の策定による、医療の一般化・均一化を任せていただきました。
「女性医学・女性のヘルスケア」という分野は、日本では当院の開院と同じ2014年に新しく生まれたばかりの分野です。私が専門医を取得した当時は、研究・教育機関でもある岐阜大学ですら私以外に「女性ヘルスケア専門医」がいないという状況でした。これは岐阜県に限った話でありません。
昔から、「病気になったら病院へ行く」というイメージの強い日本では、「病気の治療」よりも「病気の予防・生活の質の改善」に軸足を置いた医療の概念はなかなか広がりにくく、需要もそれほど大きくなかったことも背景としてはあるでしょう。しかし、女性の社会進出とともに女性の日々の生活の質を向上させること、そのためにピルの内服や更年期治療を行うことなどは今や当然のこととして受け入れられるようになってきました。女性ヘルスケアの重要性はかつてなく高くなってきています。
ただ、産婦人科の中でも「婦人科癌(特に手術の方法や技術)」や、「周産期医療(産科)」が世界トップレベルの成績で、むしろ世界を引っ張っていく立場にあるのとは対照的に、「女性のヘルスケア」では日本はアメリカやヨーロッパに比べ大きく後れを取っているのが現状です。
例えば、当院が得意とするホルモン補充療法に使われる「天然型黄体ホルモン製剤」。日本で発売になったのは2021年です。しかし、フランスでは1980年から既に使われていました。なんと41年遅れです。
最近はその差は縮まってきてはいますが、昨年発売された「天然型エストロゲン配合ピル」は北米・ヨーロッパから3年遅れ。
理由があってホルモン補充療法ができない更年期障害の患者様に、非ホルモン剤ながらホルモン補充療法とほぼ同等のホットフラッシュや寝汗の改善効果を期待できる「NK3受容体拮抗薬」は米国・ヨーロッパでは2023年に発売されましたが、日本では現時点で臨床試験中です。結果は良好ですので、おそらく数年以内に日本でも導入されるとは思われますが、実は海外では更に一歩進んだ「NK1/NK3受容体拮抗薬」の臨床試験が行われており、国際学会に参加するとこの話題で持ちきりです。
そのため、昨年参加した国際閉経学会では、
「あなたはNK3受容体拮抗薬を普段の診療でどれくらい使っていますか?」
「残念ながら、日本ではまだ承認されていないんですよ」
「Oh…」
という感じの会話になってしまいました。
診療面でも同じです。海外では既に細かく定められている治療指針が、日本ではあいまいなまま各医師の判断にゆだねられている、なんてことも往々にしてあります。
私が岐阜大学で行ったのは、海外の最新の文献や診療指針から、日本でも妥当性が高いと思われるものや、「診療指針」として定まっていなくても、学会(日本女性医学学会)内で専門の医師たちが議論する中では半ば「常識」として当然のように行われている治療法などをまとめ治すことでした。いわば、診療を世界水準に引き上げるための作業です。岐阜大学産科婦人科の諸先生方のご理解・お力添えもあり、新設された「内分泌カンファレンス」を通して全員で理解を深めながら、無事、完成にこぎつけることができました。
その過程で偶然にも新たに開発できた新型のホルモン補充療法もあり、件の国際閉経学会で発表、今年は論文も受理されました。この治療法は当院の患者様からも概ねご好評いただいております。ただし、これも実は原型は10年以上前から海外で既に行われていた治療法なのです。
このような例を見るにつけ、「女性のヘルスケア」の分野で「世界水準の医療」がいかに重要か、日々痛感しています。
2025年は間もなく終わってしまいますが、2026年も、日本の5年・10年先の未来の医療を既に行っている海外に劣らない医療レベルを小池レディスクリニックが提供できるよう、励んでまいります
「世界水準の女性医療を、大阪難波(なんば)で」
それでは皆さま、良いお年を。