私の患者で、よくこんなことを聞く人があります。
「閉経してから、冷えのぼせ、全身倦怠感(体のだるさ)、不眠に加えて膝の痛みで3年間悩んでいました。55歳の時から「ホルモン補充療法」を受けて、これらの症状は見違えるほど改善されました。身体は軽くなり、不眠も解消し、膝の痛みも消えました。この治療法が私には合っていると思いますが、いつまで続けたらいいのでしょうか?」
この質問に対しての回答ですが、結論から先に述べますと、ホルモン療法は、「元気でいたい時まで」続ければいいのです。外来でも、このように答えると、患者さんから「じゃあ、死ぬまでですね」と逆に切り返されてしまうことが、しばしばあります。
ただ、注意しておくことが一つあります。「ホルモン療法」と一口に言っても、いろいろな方法があります。女性ホルモンに精通した専門医(産婦人科内分泌代謝専門医)の管理下で、副作用のあるような方法ではなく、「安全なホルモン療法」であれば、「元気でいたい時」まで続ければいいということです。安全なホルモン療法とは12歳(初経)から50歳(閉経)まで、卵巣から分泌されていたホルモンと同じ、いわば「卵巣があなたに行っていたホルモン療法」と同じ方法です。もちろん現在、誰かから元気な卵巣を移植することはできませんが、卵巣から分泌される「エストロゲン」と「プロゲステロン」の周期的な分泌に似せたスタイルでホルモン補充をする方法が「安全で有効」な理想的方法です。
ですから「閉経後のホルモン療法はいつまで続けるか?」というご質問の内容は、「この車は、いつまでエンジンオイルを補給して走るのですか?」と同じ質問なのです。車を走らせるとき、エンジンオイルが満たされていなければガタついて故障の原因になってしまいます。同じように、女性が人生を走るには、女性ホルモンが満たされていなければ体に「ガタ」がでてきてしまい、様々な病気の原因になります。逆に、長期にわたって女性ホルモンを補充すればするほど、それだけ骨粗鬆症、動脈硬化症、認知症等の生活の質を左右する病気にかかる危険率を減少させます。また、一端中止してしまえば、その時点から当然の事ながら、ホルモン欠乏の症状が再燃し、生活の質をおびやかします。
参照:
1)小池浩司 執筆: 知っておきたい今日のホルモン療法:これからのHRT
産婦人科治療 98:277~283、2009
2)第30回日本女性学学会学術集会・ランチョンセミナー講演:「更年期からのヘルスケアにおけるエストロゲンの役割」(演者小池浩司)発表