45才から55才の婦人が月経周期の異常に加えて自律神経失調症状が出現すれば更年期障害の始まりです。自律神経失調症状の中でも「のぼせ、ほてり」が最も代表的な症状です。典型的な「のぼせ、ほてり」とは「何の前触れなく、まず胸部に熱感が生じ、瞬間的に首や顏に広がって、首や顔面が紅潮し、しばしば原因も無いのに汗がふきだすように流れる現象や、動悸、不安感を伴う」一連の症状を言うものです。「のぼせ、ほてり」の発作時には周囲の人が、なにも暑いと感じていないのに、本人は、独り「暑い暑い」といって窓を開けたり、暖房のスイッチを切ったりします。発作の持続時間はおおむね1ー2分で、頻度も日に数回以上を訴えることもしばしばあります。時と場所を選びませんので、夜間にもしばしば出現し、寝汗や睡眠障害の原因にもなります。症状の発現、程度は個人差が大きく、何も訴えが無い人もいます。統計によりますと、閉経婦人のおよそ60ー70%が「のぼせ、ほてり」を自覚すると言われております。このような症状が出現する理由はまだ全て解明されていませんが、更年期に入ってエストロゲンの分泌が低下すると、脳の視床下部にある自律神経の中枢の調節機構(キャンディーニューロンのネットワーク)が乱れるため生じるものと考えられています。
(キャンディーニューロンの詳細:小池大我・小池浩司執筆 「プラセンタ療法」臨床婦人科産科79:p152-159,2025)
自律神経失調症状がエストロゲンの分泌低下と相関するため、これらの症状にはホルモン補充療法が著効を示します。
図(図の引用:「更年期からの輝き(小池浩司著)」)には更年期障害の症状で最も特徴的な「のぼせ・発汗亢進」等の症状に対するホルモン補充療法の有効性を示しています。一般的にはホルモン補充療法を開始すると、早い人ではおよそ2週間で症状の著明な改善が見られ、3ヶ月もすれば殆ど症状は消失してしまいます。
ところで、更年期障害、特に「のぼせ、ほてり」等の自律神経失調症状の程度は個人差が大きく、10年以上も悩まされる人もいますが、一般的には閉経前後の数年間で自然に軽減、消失することが多いです。しかし女性ホルモンの欠乏により生じる骨粗鬆症はおおむね8年前後、動脈硬化症による血管障害は10年以上を経て発症し、女性の閉経後の生活を脅かしますので、「のぼせ、ほてり」が自然に消えたたから大丈夫と言う訳ではありません。