更年期に入り、女性ホルモンが欠乏するとストレスに対する抵抗力が弱くなり、更年期症状が強く出ることが指摘されています。
動物実験では、卵巣を摘出して女性ホルモン(エストロゲン)が欠乏した状態で強いストレスが加わると「脳の部分(海馬)の神経細胞が死ぬ」ことが報告され、同時に記憶力も低下します。そしてエストロゲンを補うことにより、これらの神経細胞の死を防ぎ、記憶力の回復をもたらす事を私共は報告しています(図参照 K.Takuma, K.Koike et al Neuroscience 2012, 207; 261-273より改変)。
ですから、閉経前は女性ホルモンがストレスから、女性の脳を守ってくれていますが、更年期に入り「ホルモン欠乏状態」になるとストレスに対する抵抗力がなくなり、「ガラスのように壊れやすい精神状態」となるのです。
つまり、更年期の女性の心は傷つきやすく、「ホルモン欠乏」状態で社会生活することは、丁度、裸足でイバラの野原を歩く様なもので、ちょっとした事でも、皮膚は血みどろになってしまうのです。
しかし、社会は、「ホルモン欠乏」状態の女性に特別な扱いはせず、イバラの野原を素足で歩いている認識はありませんから、女性にとっては負担が大きくなります。ですから、ホルモンを補充することで、閉経前女性と同じホルモン環境に戻し、無理解(!?)な社会に対して自衛する必要があるのです。
問題なのは、「ホルモン欠乏」状態の女性がストレスに対する抵抗力がないことを、社会のみならず、当の女性自身が自覚していない所なのです。その結果、社会生活を送る中で知らず知らずのうちに深く傷つき、離職してしまう女性も少なくありません。
現在、更年期障害が社会にもたらすマイナスの経済効果は実に1.9兆円と言われています。有能な女性たちが更年期障害によって社会の最前線から遠ざかってしまうのは、ご本人はもちろん、国にとっても大変な損失なのです。

参照 )
1)日本テレビ(News プラスワン)にて「ストレスと更年期障害」(2005年7月)の話題でのゲスト出演の内容が含まれています。
2)茨城県産婦人科医会学術講演会(特別講演):「ホルモン補充療法の考え方:ガイドラインとその解釈」(演者小池浩司)発表
(平成22年7月3日 水戸市)
3)第4回庄内更年期を考える会 (特別講演):「これからのHRT:中高年以降のヘルスケアを支える安全なHRTとは?」
(演者小池浩司)発表 (平成22年7月16日 酒田市)
4)富山県産婦人科医会(特別講演):「エストロゲンと認知機能」(演者小池浩司)発表 (平成22年9月10日 富山市)