婦人科で扱う主な病気について
婦人科では、生理に関するお悩みやおりものの異常、下腹部の痛み、がん検診など、女性の健康に関する幅広いご相談を承っています。その中には早期発見・早期治療が重要な進行性の病気もあります。以下に、そんな婦人科の代表的な疾患について解説します。
子宮頸がん
子宮頸がんは子宮の入り口(頸部)にできるがんで、多くの場合、HPV(ヒトパピローマウイルス)感染が原因です。 20〜30歳代の女性で最も多くみられるがんであり、毎年約1万人が発症し、約3,000人が亡くなっています。HPVワクチンによる感染予防と、定期的な子宮がん検診が重要です。 HPV感染が持続すると、数年〜数十年かけて子宮頸部異形成を経て、子宮頸がんへ進行する可能性があります。異形成は軽度・中等度・高度に分類され、特に高度異形成はがんに進行しやすいため、円錐切除術が行われます。中等度異形成でも、長期にわたり持続する場合やハイリスクHPV陽性の場合には、同様に治療が選択されることがあります。軽度異形成は自然治癒が期待できるため、通常は経過観察となりますが、ハイリスクHPV陽性であれば慎重な経過観察が必要です。 高齢者でも発症の可能性があるため、年齢に関わらず定期的な子宮がん検診をおすすめします。
子宮体がん
子宮体がんは子宮内膜にできるがんで、閉経後の不正出血によって発見されることが多いです。肥満、高血圧、エストロゲンの過剰刺激などがリスク因子とされております。生理不順で産婦人科を受診し、「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」と診断された方は、これらの特徴を満たすことが多く、注意が必要です。 更年期障害に対するホルモン補充療法は、適切に行えばリスクを増加させることはなく、方法によってはリスクを低下させることもあります。ただし、すでにがんを発症している場合には腫瘍の増大を招く可能性があるため、治療中は定期的な子宮体がん検診が必要です。
卵巣がん
卵巣がんは初期症状に乏しく、発見が遅れやすいがんです。下腹部の張り、不正出血、腹水の貯留などを契機に発見されることが多く、発見時にステージIIIまたはIVの進行期である割合は40%以上と報告されています。 卵巣がんは検診による早期発見が難しいとされております。当院では、少しでも早く治療に移れるよう、ホルモン療法などで通院中の患者様には定期的な内診や超音波検査により卵巣腫瘍の有無をチェックし、悪性が疑われる場合には提携医療機関でのMRI精査をご案内しています。
乳がん
乳がんは女性のがんの中で最も多く、特に40〜50歳代で多くみられます。マンモグラフィや乳腺エコーによる定期検診によって早期発見が可能で、早期に発見されれば治療成績も良好とされています。 20〜30歳代の若年層では乳腺密度の関係から、乳腺エコーが有効とされ、またホルモン療法中の方も乳腺エコーによる評価が適している場合があります。
子宮筋腫
子宮筋腫は子宮の筋層にできる良性腫瘍で、生理過多や貧血、不妊の原因となることがあります。ホルモンの変動により増大しやすく、特に閉経前の時期に急速に大きくなることがあります。 低用量ピルはホルモン濃度を安定させるため、筋腫の増大を抑制する効果があるとされています。
子宮内膜症
本来は子宮内にあるはずの内膜組織が、卵巣や腹腔内など他の場所で発育してしまう疾患です。月経時に強い痛みや不妊の原因となることがあり、「逆流説(経血が卵管を通って腹腔に逆流する)」が主な原因と考えられています。 低用量ピルなどのホルモン療法が第一選択とされており、わずかに癌化リスクはありますが、手術をした場合のデメリットの方が大きくなるため、癌の予防だけを目的とした外科的治療は通常推奨されません。
子宮腺筋症
子宮内膜症に類似した疾患で、内膜組織が子宮の筋層内に入り込むことで発症します。出産や流産手術などによる子宮内膜の損傷がきっかけとなることがあります。 子宮が肥大し、月経困難症や過多月経を引き起こすことがあり、診断には画像検査が必要です。治療は低用量ピルなどのホルモン療法または手術が選択肢となります。
子宮頸管ポリープ
子宮の出口にできる良性の腫瘍です。不正出血やおりものの増加の原因となることがあります。外来で簡単に切除可能ですが、再発することもあります。
子宮内膜ポリープ
子宮内膜にできる良性腫瘍で、不正出血や月経過多、不妊の原因になることがあります。必要に応じてホルモン治療や、提携病院での切除を行います。