内分泌疾患や生活習慣病に対する診断・治療は「内分泌代謝専門医」である院長・副院長が、専門知識と豊かな経験を持って診療提供しています。
また、内科的な悩みや体調不良なども総合内科的な立場で診療しますので相談してください。
内分泌疾患について
多毛症
多毛症とは女性が男性型の発毛状態を示す場合をいいます。女性の顔の口の周囲やあご、胸、下腹部のへそから下に発毛をみとめたり、背中、太もも、腕 などに発毛を認めます。Ferriman&Gallweyの多毛スコアを用いて8点以上が多毛症と診断されます。
(参照 小池浩司 執筆 「多毛症」 臨床婦人科産科 57:470-471、2003)
Q どのような原因で多毛症となるのでしょうか?
A 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)、先天性副腎過形成(CAH)、アンドロゲン産生腫瘍(卵巣・副腎など)があります。
そのほか、薬剤(ステロイドホルモン、ミノキシジル、ダナゾール)によるもの、家族性の体質が関係していることもあります。
Q 特発性多毛症とはどのような多毛症をいうのでしょうか?
A テストステロン、プロラクチン、LHDHEA-S、などのホルモンを測定してすべてのホルモンが正常な場合に診断します。血液中の男性ホルモンが正常ですが皮膚での5-αレダクターゼ活性が亢進して、DHTへの転換が亢進している状態であると考えられています。
(参照 小池浩司 執筆 「多毛症」 臨床婦人科産科 57:470-471、2003)
にきび
「にきび」の原因は毛孔(毛穴のこと)がふさがれて、そこに感染が生じて、毛孔に皮膚が膨れ上がった状態のものです。
この「にきび」は、幼い子供や中年はめったに見られず、思春期に特徴的にみとめられます。 また、女性よりも男性に多くみとめられ、その程度も男性の方がひどいのが一般的です。
(参考 ニキビ、多毛症に関するDVDは小池レディスクリニック(大阪なんば)にて販売しております)
Q 女性にニキビができる理由を教えてください。
A 女性の「にきび」の一番の原因は男性ホルモンです。男性ホルモンは毛根に作用して、発毛を促進するだけでなく、毛穴にある皮脂腺にも作用して「皮脂」を分泌させます。しかし、毛孔がふさがってしまい、「皮脂」が排出されずにたまると、そこに常在している 菌(アクネ菌といいます)がたまった「皮脂」を餌にして増殖しはじめ、毛嚢全体が感染し、最終的に膿がたまって、赤く膨れ上がり、「にきび」となるのです。
にきびの原因は「毛嚢の感染」ですが、その原因は男性ホルモンの作用によって作られた「多量の皮脂」 にあるのです。
あちこちの毛嚢で皮脂が多量に作られれば、その分だけ、毛嚢がふさがって結果的に「にきび」ができる率も高まるわけです。
Q ニキビが治らず悩まされています。どうしたらよいのでしょうか?
A 難治性の「にきび」に加えて「多毛症」も認められる場合は、ホルモンを専門にしている産婦人科の先生を受診して、先ず 血液中の男性ホルモンを測定してもらって下さい。血液中の男性ホルモンは卵巣や副腎か ら産生されますので、男性ホルモンが増加している場合にはその原因として卵巣や副腎の病気などがあるからです。
一方、男性ホルモンに異常が無い場合には、男性ホルモンに感受性が高い「体質的なもの」と考えられます。
先ず、睡眠を十分とり、ストレスを避けて、食事に注意して下さい。「にきび」の直接的な原因は「毛嚢の感染」ですが、そのもとの さらなる原因は男性ホルモンの過剰な刺激ですから抗菌薬での治療だけでは不十分です。
「にきび」に関する詳しい診断や治療は、婦人科内分泌代謝専門医に相談してみてください。
(参考 ニキビ、多毛症に関するDVDは小池レディスクリニック(大阪なんば)にて販売しております)
冷え性
「冷え症」とは、からだは寒くないのに「身体の特定の部分だけが冷たく感じる」という症状を言います。冬に「冷え」を訴える人がもっとも多いわけですが、一年中「冷え」を訴える人も、もちろんいます。例えば夏でも「靴下が はなせない」とか「スカートがはけない」といった女性がいます。もっとも多いのが腰で40%、次いで足の30%、それから下肢で15%、 手、腹部と続きます。
(参照「NHK暮らし塾」で「冷え性について」テレビ出演して、当院の院長が解説した記事に基づいております)
Q 冷え症の原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
A 一つは体質的なもので、いわゆる、冷え症とよばれているものや低血圧症のひとに見られるものです。
もう一つは病気の症状として現われているもので、女性特有の女性ホルモンの分泌不全 に伴うものが圧倒的に多いです。
そのほか内科的な病気としてレイノー症候群、膠原病、自律神経失調症、慢性動脈閉塞症といった病気もありますので、手足のしびれや痛みを伴うようでしたら医師に相談することを勧めます。
Q 冷え症は更年期障害と関係するのでしょうか?
A 一般的に加齢により冷えを訴える頻度は増します。しかし女性の場合は女性ホルモンの 影響が大きく、月経異常者の3分の1に冷え症が認められると言われています。
年齢では ホルモン分泌が不安定な思春期の女子にも見られますが、加齢も加わって更年期、閉経後 の女性に圧倒的に多く見られます。
こうしたケースにはホルモン分泌不全が原因ですので、ホルモン療法が大変よく効きますので「産婦人科内分泌代謝専門医」に相談してみてください。
(参照「NHK暮らし塾」で「冷え性について」で、テレビ出演して解説しています)
生活習慣病について
生活習慣病とは
生活習慣病は、毎日の生活習慣が大きく関わって起こる病気のことをいいます。代表的なものには 高血圧、糖尿病、脂質異常症 があり、ほかにも 高尿酸血症(痛風)、肥満、動脈硬化症、一部のがん などが含まれます。
なぜ生活習慣病になるの?
病気は遺伝の影響もありますが、特に 食事・運動・睡眠・喫煙や飲酒 などの生活習慣が発症や悪化に大きく関わります。
治療の特徴
生活習慣を見直すことで、薬に頼らず改善できる場合も少なくありません。もちろん、症状が進んでいるときは早めに薬を使うことも大切です。
何科で診てもらえる?
生活習慣病は、主に 内科、内分泌・代謝科 で診療しています。内分泌・代謝科の専門医は内科の他、小児科、脳外科、泌尿器科、産婦人科などにもいますので、ご自身の体調やライフステージに合わせて受診できます。
高血圧について
高血圧症には、遺伝的なものもありますが、生活習慣が原因となることも多く、また生活習慣が遺伝的な高血圧症を悪化させることもあるため、生活習慣病として扱われています。
関係のある生活習慣とは、塩分の過剰摂取、肥満、運動不足、過度の飲酒、喫煙、ストレス、睡眠不足や睡眠時無呼吸症候群、カリウム不足などです。
頭痛や肩こりなどの症状があることもありますが、無症状のことも多いです。放置すると、脳卒中や心筋梗塞、心不全、大動脈瘤や大動脈解離、腎不全、網膜症など、命に関わったり、その後の生活の質を大きく低下させる病気のリスクが上がります。
糖尿病について
糖尿病にはインスリン(血糖値を下げるホルモン)を作れなくなる(作っている細胞が破壊される)1型糖尿病、生活習慣が主にかかわる2型糖尿病の他、MODYと呼ばれる遺伝性の糖尿病もありますが、原因として生活習慣と遺伝的な原因はグラデーション状に関係していて、どの糖尿病も究極的には遺伝的でもあり生活習慣が原因でもあると言えます。
また、妊娠糖尿病という妊娠時にのみ出現する(出産後は自然に治る)糖尿病もありますが、妊娠糖尿病を発症した場合はその後の人生で糖尿病を発症しやすくなることがわかっています。
インスリンが分泌できない場合はインスリンの補充が必須ですが、どの糖尿病でも治療の際にまず必要になるのは食事や運動習慣の改善です。
糖尿病は適切な治療を行わずに進行すると、網膜症や神経障害、血管障害、腎障害を引き起こし、失明や足の指先などの壊疽(切断が必要)、透析が必要になることもあります。
脂質異常症について
500万年前に最初の人類が地球上に現れて以来、人類の歴史は常に飢餓の歴史でした。
そのため、基本的には余裕のある時に脂肪として体に蓄えることのできる体質の人類だけが生き残り、すぐにやせてしまうような体質の人類は絶滅(淘汰)してしまったと考えられています。
しかし、今は、特に日本では食べ物に困るという事態は少なくなっています。
栄養価の高い状態にずっとさらされる、しかも機械化によって運動量も減って余分なエネルギーが消費されない、というのは、人類の歴史では異常事態です。その結果、生じてしまうのが脂質異常症なのです。
脂質異常症にも生活習慣によるもの以外に遺伝的な原因がよるものも、もちろんあります。しかし、他の生活習慣病と同様、どちらの場合でも生活習慣の改善が重要であることは変わりません。
脂質異常症には症状がありません。日本人に多い、特に太っていないまま脂質異常症になっている場合はなおさらです。
しかし、緊急性がないからと言って放置していると、動脈硬化が進んでしまいます。しかし、動脈硬化にもやはり症状はありません。
更に放置した場合、脳卒中や心筋梗塞、大動脈瘤や大動脈解離として突然症状が出現し、取り返しのつかないことになります。
Q 産婦人科で生活習慣病を診てもらうことの利点はありますか?
A 実は、女性の一生の中で、閉経は生活習慣病のリスクを上げてしまう大きな原因の一つです。女性ホルモンのエストロゲンは、子宮や乳腺などの女性ならではの臓器だけではなく、全身に作用しています。骨、筋肉、血管、脳…。体中の様々な場所でエストロゲンは重要な役割を果たしています。
しかし、女性ホルモンがバランスを失い、欠乏してしまう更年期、そして閉経後は、やはりエストロゲンが作用していた場所もバランスを崩してしまいます。
例えば、動脈は血管内皮と呼ばれる一番内側の部分が閉経後10年程度でリモデリングといって構造が固く変化(動脈硬化)し、高血圧の原因となります。
最終的には脳卒中や認知症、心筋梗塞の原因となってしまいます。
また、脂質代謝は悪化し、悪玉コレステロールや中性脂肪が増加します。その結果、動脈は詰まりやすくなり、体も太りやすくなります。
体脂肪が多くなると、血糖値を下げるホルモンであるインスリンのききが悪くなり、糖尿病のリスクが高くなります。
更には、骨密度は低下し、関節痛が出現し、筋力も次第に弱くなります。これらによる運動量の低下は、生活習慣病の悪化に拍車をかけます。
生活習慣を特に変えなくても、いくら健康に暮らしているつもりでも、これらの変化は女性には必ず起きてしまうのです。
では、これを予防する方法はないのでしょうか?そんなことはありません。産婦人科を受診していただければ、ホルモン補充療法ができます。
ホルモン補充療法は子宮に対する影響があるため、定期的な内診が必要であり、安全性を考えれば産婦人科以外では基本的に行えません。
Q ホルモン補充療法は生活習慣病の予防にどのようにかかわるのですか?
A ホルモン補充療法は、更年期障害を治すだけではなく、血管を守り、脂質代謝を正常化し、骨や関節、筋肉を守ることのできる画期的な治療法です。
当然、高血圧や脂質異常症、糖尿病などがなんでもかんでもホルモン補充療法だけで治るわけではありません。単純な加齢による影響や、そもそもの生活習慣が原因のものを完全に防ぐことはできません。
しかし、閉経による体の変化は止める方向に働くため、それぞれの病気の治療強度を下げることにはつながります。
軽いものであればホルモン補充療法だけで改善することも、もちろんあります。実際に、ホルモン補充療法を長期間継続している女性では生活習慣病リスク、それによる生活の質の低下や死亡率が低下することが明らかになっていますし、逆に閉経前に病気で卵巣を摘出せざるを得なかった女性では、その後にホルモン補充療法を行わなければ生活習慣病リスクが大きく跳ね上がることも知られています。
また、小池レディスクリニックでは、ホルモン補充療法の管理のため、必ず血管年齢の測定を行い、動脈硬化の進行や血管の詰まりがないかを確認します。
動脈硬化が疑われる場合には頸動脈超音波検査も実施します。また、コレステロールや血糖値などの採血チェックも行います。
これらを定期的に実施することで、生活習慣病を早期発見・治療することができるのも、またホルモン補充療法で通院する利点といえるでしょう。
甲状腺疾患について
甲状腺疾患には大きく甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、甲状腺炎、甲状腺腫瘍があります。
小池レディスクリニックでは超音波検査や採血などでこれらの診断が可能ですが、その中でも産婦人科と関連が深い病気は甲状腺機能低下症です。
甲状腺機能低下症について
甲状腺機能低下症は女性で多い疾患です。妊娠出産を機に発症する場合もあり、生理不順の原因となっている場合もあります。
更年期にもよく発症するため、症状の似ている更年期障害と勘違いされがちです。
また、中高年で増加するため、70歳以上の女性では1/3は潜在性甲状腺機能低下症とも言われています。
放置した場合、心血管疾患や脂質異常症の原因となります。
橋本病について
甲状腺機能低下症のうち、自己抗体が原因で発症するものが橋本病です。
血液検査で抗TPO抗体、抗サイログロブリン抗体のいずれかが陽性であれば診断できます。
当初は無治療経過観察でよいことが多いですが、ゆっくりと進行していきますので、甲状腺ホルモンや甲状腺ホルモン放出ホルモンを定期的に確認しつつ、治療が必要となった場合は甲状腺ホルモンの補充を行います。