ピルについて
ピルには卵胞ホルモン(エストロゲン)と合成黄体ホルモン(プロゲスチン)の2種類のホルモンが含まれています。
エストロゲンの含まれている量や強さによって、中用量ピルと低用量ピルに分類されます。また、黄体ホルモンのみで作られているピル(Progestogen Only Pill (POP))もあります。
もっともよく用いられる低用量ピルは、2種類のホルモンの組み合わせにより、おおむね5種類に分類されます。また、低用量ピルには、入っているエストロゲンの濃度が非常に低い「超低用量ピル」や、天然型エストロゲンを使用した「E4 LEP」と呼ばれる種類のピルもあります。
更に低用量ピルには避妊目的に使用する自費診療のピルと、生理痛の軽減(月経困難症治療)などを目的にした「LEP」と呼ばれる保険適用のあるピルがあります。
LEPの中には、毎月生理を起こすタイプの「周期的投与法」タイプと、生理の回数を減らすことのできる「連続投与法」タイプのものがあります。
ピルの特徴について(クリックで表示)
ピルの特徴は入っている薬剤の種類によって決まります。ピルには2種類のホルモンであるエストロゲンとプロゲスチンがあり、エストロゲンには合成エストロゲンであるエチニルエストラジオールと天然型エストロゲンであるエステトロールが、プロゲスチンには第一世代~第四世代と呼ばれる4種類があります。
これらを組み合わせたピルが日本では使われており、プロゲスチンの世代が後になるほど男性ホルモン作用は少なく、多毛やニキビになりにくくなりますが、血栓症リスク自体は第二世代(ラベルフィーユ・ジェミーナ)が最も低いとされています。
また、PMSに対し精神症状も含めて最も効果があるのは第四世代(ヤーズ、ヤーズフレックス、ドロエチ、アリッサ)とされています。一方、第一世代(ルナベル/フリウェル)は日本で最初に導入された保険適用のピルであるため実績は豊富で、容量も低用量と超低用量の2段階があるため、超低用量タイプで不正出血が出てしまう場合には低用量タイプに切り替えることで改善が期待できます。
現時点で天然型エストロゲンであるエステトロールを含む唯一のピルであるアリッサは、開発されたばかりで実際の臨床データは少ないものの、そのエストロゲンの特性から、血栓症リスクが低いこと、乳癌リスクが低いこと、骨代謝への影響が小さいこと、血圧への影響が小さいことなどが期待されています。
また、注意すべき併用薬剤が少なく授乳中でも使えること、10代や40代、喫煙者や高血圧のある方など、これまでであればピルが使いにくかった方にもより安全に使ってもらえるのではないか、と考えられています。
小池レディスクリニックで扱っているピル(先発品/後発品)
| 小池レディスクリニックで扱っているピル(先発品/後発品) | 分類 | 投与方法 | 自費/保険 |
|---|---|---|---|
| ルナベル/フリウェル | 低用量/超低用量ピル | 周期的投与法 | 保険 |
| ジェミーナ | 超低用量ピル | 周期的投与法/連続投与法 | 保険 |
| ヤーズ/ドロエチ | 超低用量ピル | 周期的投与法 | 保険 |
| ヤーズフレックス | 超低用量ピル | 連続投与法(フレキシブル投与法) | 保険 |
| アリッサ | E4 LEP | 周期的投与法 | 保険 |
| ラベルフィーユ | 低用量ピル | 周期的投与法 | 自費(経口避妊薬) |
| ファボワール | 低用量ピル | 周期的投与法 | 自費(経口避妊薬) |
| プラノバール | 中用量ピル | 不正出血/月経移動/周期的投与法 | 保険/自費 |
| スリンダ | POP | 周期的投与法 | 自費(経口避妊薬) |
Q ピル以外に避妊する方法はありますか?
A 女性にとって望まない妊娠は避けたいものです。それを避けるための方法、つまり避妊法には、排卵日を避けてセックスをする自然避妊法(荻野式)、膣外に射精する膣外射精、コンドームを用いる方法、子宮の中に避妊器具を挿入する方法、そして、経口避妊薬(ピル)を内服する方法など、様々な方法が知られています。しかし、この中で確実な避妊法といえるのは、子宮内避妊器具とピルのみです。
コンドームは最初から最後まで装着するという「理想的な使用」ができれば失敗率は2%と言われていますが、「一般的な使用」では10%が失敗するといわれています。その他の方法については更に避妊率が低く、避妊法としては推奨されません。
Q ピルを服用した場合に副作用としてどのようなものがありますか?
A ピルの副作用は大きく分けて二つあります。一つは、比較的軽微なトラブルで、一時的なものです。ピルを飲みだしても無症状の人が圧倒的に多いですが、中には、軽い吐き気を感じたり、けだるさや頭痛、むくみなどを感じるひともいます。
長期的な服用による副作用として注意する点は乳がん、狭心症、血栓症などがあり、医師の管理の下で服用してください。ちなみに、よく「ピルは太る」と言われていますが、これは様々な研究によって否定されています。食欲が増加することがあり、その通りに食べてしまえば体重が増えてしまうことはあるかもしれませんが、「ピルを飲んだだけ」で太ることはありません。
Q 避妊目的でピルを飲んでいた場合、妊娠する確率はどのくらいでしょうか?
A 避妊目的でピルを飲んでいた場合、ピルを飲んでいる女性が避妊に失敗する率は5%くらいといわれています。この5%の失敗率は、「一般的な使用」での失敗率ですが、もし、ピルを「理想的に使用」した場合には失敗率は0.1%と言われています。
一般的使用での場合には、ピルの飲み忘れによる失敗が最も多いと考えられています。
Q ピルは避妊の他に何か副効果はありますか?
A ピルによる避妊の主なメカニズムは排卵の抑制です。そのため、不規則な生理で困っている人や、ホルモンのバランスが悪くて不正出血を繰り返している女性は、ピルを服用することにより不規則な排卵を抑え、ピルに含まれたホルモンよって作られる生理周期によって、規則的な生理が来るように調整できます。
当然、排卵痛もなくなります。さらに、子宮筋腫や子宮腺筋症などで、生理の量が多く貧血になっている人は、月経血の量を減らして、貧血を改善させることができます。
子宮内膜症など生理痛が強い人も、ピルを飲むことで、生理痛が随分軽くなります。
Q 何歳頃からピルを使っても良い?
A WHOの推奨では「初経が来たらいつでも開始して良い」とされています。
ピルには高濃度の女性ホルモンが含まれていますので、未発達の段階で使用すれば身長などを含め、身体の発達に影響が出る恐れがありますが、女性の成熟過程において、生理が来るようになるのは最終段階なのでそれ以降は問題ないだろう、というのが根拠です。
しかし、厳密には生理が始まった段階では身長の伸びなどはまだ完全には停止していないことが多いです。
そのため、ここから先は処方する医師の裁量にもなりますが、小池レディスクリニックでは初経から2-3年はピルを使わず、身長の伸びが止まってから開始することをお勧めしています。
Q ピルは40歳以上は使ってはいけないのですか?
A ピルは血栓症のリスクがあり、年齢とともにそのリスクが高くなることは事実です。
そのため、かつては「40歳以上はピルは飲んではいけない」「40歳以上には処方してはいけない」という誤解が患者・医師の双方にありました。しかし、ピルは避妊のためにも月経困難症やPMSなど月経関連の病気の治療のためにも、月経のある女性にとっては必要なものです。
血栓症リスクを強調するあまり、本当に必要な人にピルが届かない状況になっていたため、学会のガイドラインでは、「50歳以下もしくは閉経」までであれば、必要な人には処方することを推奨する方針を明確にしています。
ただし、35歳以上では、「1日15本以上の喫煙」をされている方にはピルを処方してはいけないことになっていますので、喫煙者の方には、健康のためにもできれば禁煙、少なくとも減煙をお願いしております。
ジエノゲストについて
ジエノゲスト(ディナゲスト)は月経困難症・子宮内膜症の治療を対象とした合成黄体ホルモン単独の内服薬です。 ジエノゲストの特徴として月経困難症や子宮内膜症の治療効果が高いことはもちろん、抗アンドロゲン作用(男性ホルモンを抑える作用)、排卵抑制作用、PMSの抑制作用があります。また、血栓症リスク・乳癌リスクが非常に低いのも魅力です。
ピルと違って毎日飲み続ける薬ですので、生理がなくなることもありますが、不正出血の頻度は高めです。
ミレーナについて
ミレーナは「レボノルゲストレル子宮内放出システム(LNG-IUS)」というのが正式な名称です。レボノルゲストレルはピルにも使われる黄体ホルモンの一種です。黄体ホルモン単独で用いる薬であることはジエノゲストと同じです。
生理痛を抑える効果・出血量を減らす効果・避妊効果は非常に高く、20%で生理もなくなります。また、血栓症リスクも非常に低いです。
スリンダについて
スリンダは現時点で日本唯一の飲み薬での黄体ホルモン単独のピル(POP)です。ピルで問題となる血栓症のリスク因子であるエストロゲンが入っていないため、血栓症リスクは非常に低く、35歳以上で1日15本以上喫煙される方や血栓症リスクがある方など、通常ピルが処方できない方でも内服が可能です。また、授乳中や高血圧のある方も使用可能です。それでいて、避妊効果は通常のピルとほぼ同等です。一方で、通常のピルに比べて不正出血の頻度は高めです。