性感染症を理解し、ポジティブに治療を!適切な検査と最新の医学的エビデンスに基づく治療で確実に治しましょう!
性感染症(性病)について
性感染症(性病)は、性交渉を経験した誰もが感染する可能性がある身近な病気です。無症状のまま進行すると不妊症の原因となることもあるため、定期的な検査が大切です。
治療で最も重要なのは「パートナーと一緒に治す」こと。自分だけ、相手だけの治療では再感染を繰り返してしまいます。感染が判明したら、
- パートナーも検査する
- 陽性なら一緒に治療する
- 治るまでは性交渉を控える
の3点を守りましょう。
感染源を特定するのはほとんど不可能です。「誰からうつったか」よりも、「一緒に治す」という前向きな姿勢が大切です。
小池レディスクリニックでは、女性だけでなく男性も尿検査で診断・治療が可能です。パートナーと共に安心してご相談ください。
クラミジア
クラミジア菌は3種類ありますが、クラミジア・トラコマティスという菌がクラミジア感染症の中では最も多い菌です。一般にクラミジアは性交渉により、男性から女へ、あるいは女性から男性へと感染します。どちらかのパートナーがクラミジアに感染した場合、「相手の方に感染している可能性は60%くらいある」と言われています。感染している可能性が高いので医療機関を受診してクラミジアに感染しているかどうか確認することが必要です
Q クラミジアに感染している男性と性交渉を持ちました。感染したらいつ頃発症するのでしょうか?
A 性交渉によって男性の精液から排出されたクラミジアは1~3週間後に子宮の入口の部分、即ち、子宮頸部の頚管に炎症を起こして、クラミジア頚管炎と呼ばれる炎症を起こします。
希に、バルトリン腺にも感染することが報告されています。
Q 男性がクラミジアに感染した場合どのような症状が出ますか?
A 男性がクラミジアに感染した場合、男性の50%が無症状だったとの報告があります。
症状がある場合は、排尿時に違和感を覚えたり、痛み感じたりすることがあります。また、排尿時とは無関係に、尿道にかゆみを感じたり、不快症状を訴えたり、膿のような分泌物が出てきたりします。
Q クラミジアに感染している男性と性交渉を持ちました。女性が感染していたらどのような症状がでるのでしょか?
A 女性の70%が無症状であったとの報告もあります。しかし代表的なものとして、おりものが増えたり、下腹部の痛みや不快感を感じることがあります。
また、不正出血や性交渉の際の痛み、あるいは月経痛の原因となることなども挙げられます。また、悪化すれば、発熱の原因にもなります。
Q クラミジアに感染しています。女性が感染した場合放置すると、どうなるのでしょうか?
A クラミジアに感染すると子宮の入口での感染、クラミジア頚管炎が起こります。この頚管炎の状況で、性交渉を持ちますと、女性から男性に感染します。
放置するとさらに子宮内膜炎や骨盤腹膜炎の状態になり、不妊症や子宮外妊娠の原因となります。さらに炎症が拡大すると肝周囲炎を発症します。
Q 妊娠5週です。クラミジアに感染してそのままにしておくと、どうなるのでしょうか?
A 妊娠初期にクラミジアに感染すると絨毛膜炎や羊膜炎を起こし、流産や早産の原因になります。治療が必要です。
Q 妊娠37週です。クラミジアに感染してそのままにしておくとどうなるのでしょうか?
A クラミジアに感染したまま分娩しますと、新生児がクラミジア感染を起こし、30%くらいに新生児結膜炎を起こし、5~6%くらいに新生児肺炎を発症しますので、治療が必要です。
淋菌
「淋病」は淋菌の感染によるものです。自然には人以外には感染しない、弱い細菌で、温度の変化や乾燥、消毒などで簡単に死滅します。
人から人への感染は性交によって起こります。男女ともに尿道、肛門、口腔、目(結膜)に感染します。女性の場合は、女性器の膣、子宮、卵管で増殖します。
Q 性交後、潜伏期と何日くらいでしょうか?
A淋菌は性交渉で感染し、菌は粘膜で増殖します。一般的には、性交渉のあと2~7日間の潜伏期をもって発症します。1回の性交での感染率はおよそ30%といわれています。
Q 男性の場合どのような症状が出てくるのでしょうか?
A 男性の場合には排尿痛、ペニスの痛み、外尿道口(ペニスの尖端にある、尿道の出口)が赤く腫れ、尿道から膿のような分泌物が出てきます。
Q 淋病と診断されて放置すると、女性はどうなるのでしょうか?
A 性交渉によって男性の精液から排出された淋菌は2~7日後子宮頸部の頚管に炎症を起こして、「淋菌性頚管炎」を起こします。
症状としては、おりものが増えるたり、膿のようなおりものが出たりします。放置するとさらに子宮内膜炎や骨盤腹膜炎の状態になり、性交痛、不妊症や子宮外妊娠の原因となります。
さらに炎症が拡大すると肝周囲炎を発症します。
Q 淋病の治療法はどのようなものがあるのでしょうか?
A 抗生物質の内服か、点滴で治療する方法があります。詳しくは担当医師に相談してください。
性器ヘルペス
性器ヘルペスは単純ヘルペス・ウイルスというウイルスの感染で引き起こされます。このウイルスは2種類あり、唇にできる「口唇ヘルペス」の原因となるウイルス(HSV-1)と性器にできる「性器ヘルペス」の原因となるウイルス(HSV-2)があります。
初感染の場合、70%の人は無症状ですが、30%の人が「初感染初発」として強い症状が現れます。
この場合には、突然の強い陰部の痛みを訴えて発症し、両側性の小陰唇、大陰唇、などに多数の水泡や潰瘍が認められます。排尿時や歩行時に痛みを訴え、38度位の発熱や倦怠感、さらに両側の鼠径部のリンパ節の腫れと痛みなども訴えます。
Q 「性器ヘルペス」の原因となるウイルスは「2型(HSV-2)」だけでしょうか?
A 「性器ヘルペス」の原因となるウイルスは必ずしも「2型(HSV-2)」だけでなく、およそ40%は「口唇ヘルペス」の原因となる「1型(HSV-1)」ウイルスの感染によることもわかってきています。
Q 性器ヘルペスの再発はどのようなときに起こるのでしょうか?
A 初感染のあと、脊髄神経のところに潜伏していたウイルスは、体の抵抗力が落ちたとき、あるいは精神的、肉体的なストレスが加わったとき、月経時、あるいは局所の皮膚に刺激などが加わったときなどに、皮膚や粘膜に現れて、そこで増殖して、水泡やびらんなどの再発症状を呈します。ときに両側の鼠蹊部のリンパ腺が腫れることもあります。
Q 初感染のときに再発率を減少させるにはどうしたらいいでしょうか?
A 初感染の時に十分な治療を施すと再発を減少できることが報告されています。
Q 性器ヘルペスの再発のときに何か前兆のような症状はあるのでしょうか?
A 再発症状が出現する前に、前触れの症状として外陰部の不快感、太ももに響くような痛みや神経痛などが30~50%の人に見られます。この段階で、治療を開始すると再発を抑えることができますので、有効な対処法と言えます。
マイコプラズマ
実はマイコプラズマという名前を持つ細菌は100種類以上あります。一般的によく知られている、肺炎を引き起こすことで有名なマイコプラズマは、正確にはマイコプラズマ・ニューモニエといいます。咳やくしゃみに乗って感染(飛沫感染といいます)する細菌です。
一方、性感染症の検査で検出されるマイコプラズマはマイコプラズマ・ジェニタリウムという名前で、飛沫感染ではなく性交渉で感染する別の種類の細菌です。人間とゴリラが違う生き物であるのと似た関係にあたります。
性感染症のマイコプラズマは、1981年に男性の尿道炎から発見された比較的新しいタイプで、感染者数は女性よりも男性に多いとされています。尿道炎の原因はクラミジア、淋菌の順に多いですが、マイコプラズマはそれに次いで多い原因菌です。男性では排尿時の不快感・尿道分泌物などの強い症状がみられます。
女性では子宮頚管炎の原因となり、同じくクラミジア・淋菌に次ぐ3番目に多い原因菌です。女性では無症状のこともありますが、おりものの増加や、陰部の不快感、不正性器出血や性交時痛を引き起こします。また、妊娠中の感染は流産・早産のリスクとなる可能性がありますので注意が必要です。感染後の潜伏期間は1-3週間で、感染後24時間経過すれば検査での検出が可能になります。
Q 18歳の女性です。先日、クラミジアに感染していると言われ治療しました。治療終了後も不快症状が残っていて相談したところ、マイコプラズマの検査もしたほうが良いと勧められました。何年か前にも同じようなことがありましたが、その時はマイコプラズマのことは言われませんでした。本当に検査をする必要があるのでしょうか?
A 性感染症のマイコプラズマは、以前は検査が保険適用になっておらず、日常診療で診断することは困難でした。症状の原因が特定できず、治療に困ることも多かったのです。
しかし、日本では2022年6月1日から検査が保険適用になり、原因がマイコプラズマであることを特定して治療することが可能になりました。
マイコプラズマの検査が保険適用になったことに伴い、日本性感染症学会から検査の流れについての提言が出されました。それによると、女性の子宮頚管炎については、初診時に、「まずクラミジアなど他の性感染症の検査を行うこと」とされています。そして、「検査が陰性」、あるいは「陽性だったが、治療が完了したにもかかわらず症状が改善しない」場合に、初めてマイコプラズマを疑い検査をすることが推奨されています。但し、他にも複数の性感染症が疑われる場合など、患者様ごとの状況に応じて最初から検査をお勧めすることもあります。
また、海外で行われた研究では、10歳代の性感染症では淋菌・クラミジア以上に高率に感染者がいるという報告もあり、今後の研究の進み方次第では最初からマイコプラズマを疑って検査するのが一般的になっていく可能性もあります。
Q クラミジアの治療をしていたらマイコプラズマも治ったりしないのですか?
A 実際の治療についてですが、先にクラミジアに感染していた場合、よく用いられるのはアジスロマイシン(ジスロマック)という抗菌薬で、1gを1回内服します。実はこの治療はマイコプラズマにも有効です。では、クラミジアの治療を同時に行っていれば検査も治療もしなくても治るのかといえば、そうではありません。近年、アジスロマイシンに耐性を持つマイコプラズマが増えてきていることが問題になっています。その割合は40%以上という報告もあり、これまでのような治療が難しくなってきているのです。
現在、推奨薬とされているのはドキシサイクリン(ビブラマイシン)という抗菌薬で、100mgを1日2回、7日間内服します。しかし、こちらも耐性菌が増えつつあるとされており、今後推奨薬が変更になる可能性も十分にあります。
トリコモナス
トリコモナス原虫が膣に感染して起こる膣炎です。感染しますと「おりもの」に異常を感じます。典型的な「おりものの異常」所見は、黄緑色で、悪臭があり、泡沫状(小さい泡をたくさん含んだおりもの)を呈しています。症状が進むと「おりもの」の異常だけでなく、膣の痛みやかゆみが増し、性交後の出血があったり、性交が痛くてできなくなったりします。
Q トリコモナスは性交渉以外で感染しますか?
A 患者の年齢層も幅広く分布していて、性交渉によって感染する以外に、中高年や性交経験のない女性や幼児にも見られることがあります。
Q 感染しても症状が出ない人はいますか?
A 10~20%の患者さんには感染しても症状がありません。
Q 治療は膣座薬だけで治るのでしょぽうか?
A 治療はフラジールと言う薬剤が用いられます。膣の中に入れる「膣錠」だけでは効果が不十分なため、内服薬を10日間ほど投与します。
内服薬の投与中にアルコールを摂取すると腹痛、嘔吐や潮紅(赤ら顔)などの症状が出ることがありますので、投与中と投与後3日間はアルコールを控えてください。
尖圭コンジローマ
性交渉により伝播し、男性の外性器(亀頭、陰茎の裏側、包皮の内側)や女性外性器(小陰唇、膣口)、肛門に2~3mm前後の淡紅色から褐色調の先がとがったイボが多発するのが特徴です。
イボは柔らかく、粟粒~米粒くらいのものから、小豆くらいの大きさのものまで様々です。痛みはありません。
Q 性的接触のあと潜伏期はどの位でしょうか?
A 平均3カ月くらいの潜伏期のあとに、外性器を中心に、鶏のとさかのようなイボができて放置すると、どんどん広がってきます。
痛みはありません。女性の場合、広がれば外からは見えない膣壁や子宮の入り口(膣部といいます)にも見られます。
Q 「尖圭コンジローマ」の原因はなんですか?
A 原因はヒト・パピローマ・ウイルスですが、ウイルスのタイプは「6型」や「11型」などの、ヒト乳頭腫ウイルスによるもので、子宮頚がんの原因となる「16型」「18型」などと異なり、良性腫瘍をつくるタイプです。ですから、子宮がんの原因になることはありません。
Q 「尖圭コンジローマ」にはどのような治療方法がありますか?
A 「尖圭コンジローマ」の治療としては、液体窒素による凍結療法、電気焼灼、クリームの塗布があります。また予防には子宮頚がんの予防ワクチンの「ガーダシル」が「尖圭コンジローマ」の予防効果も併せてもっています。
梅毒
梅毒とは病原菌の「梅毒トレポネーマ」によって感染したために起こる感染症です。
トレポネーマはらせん状をしていて、運動して体内を泳ぎ回る細菌で、人の体内以外では短期間しか生きられないため、人に感染すると怖い細菌です。
通常は梅毒の感染者と性的な接触をすることで、粘膜から、あるいは皮膚の傷から「梅毒トレポネーマ」が侵入して感染します。
Q 梅毒の男性と性交渉を持ちました。梅毒の潜伏期どのくらいで、最初の症状はどのようなものでしょうか?
A 梅毒の感染病期は大きく分けて4つの病期に分けられます。性的接触による感染後3~6週間の潜伏期をへて、性器、肛門、口などの感染した場所で細菌が増殖を始めます。
あずき大~えんどう豆位の、痛みのない「赤いしこり」ができます。また鼠径部(太ももの付け根)のあたりに「痛みのないリンパ節の腫大」が認められることもあります。しかしこれらの症状は数週間で自然に軽快しますので、多くの女性が気づかないまま通り過ごしてしまいます。この時期が梅毒の病期では第1期に相当します。
Q 梅毒の病期で「早期顕症梅毒」とはどのようなものでしょうか?
A 第1期、第2期は症状が表に出ますので、「早期顕症梅毒」と呼ばれます。第2期は感染して、3ヶ月頃から3年くらいまでの期間をさします。
この時期は、皮膚の局所にとどまって増殖していた「梅毒トレポネーマ」が、今度は血管の中に侵入し、血流を介して、全身にひろがって、いわゆる全身感染してゆく時期です。
発熱や全身のリンパ節の腫れが認められます。また、血流の豊富な脳の髄膜に感染すると髄膜炎、腎臓に波及するとネフローゼ、骨の骨膜に波及すると骨膜炎といった具合に、全身に炎症が見られます。また、皮膚や粘膜には赤い斑点がまばらにみられたり(梅毒性バラ疹といいます)、皮膚から扁平に盛り上がった柔らかい丘疹(扁平コンジローマといいます)が見られたりします。
この扁平コンジローマからの浸出液のなかには大量の「梅毒トレポネーマ」が存在しますので、この発疹は強力な感染源となります。従って、この時期の梅毒感染者と知らずに性的な接触を持つとかなりの確率で感染します。
Q 梅毒の診断はどのようにするのでしょうか?
A 梅毒の診断方法ですが、採血して、STS、TPHA、FTA-ABSといった梅毒の抗体を測定することで判定します。
Q 梅毒の内服薬での治療方法を教えてください。
A 梅毒と診断されますと、アモキシシリンという抗菌薬の内服をいたします。4週間ごとに治療効果を判定しながら様子を見ます。
第1期では最低4週間、第2期では最低8週間の経口投与が推奨されています。概ね、STSで治療前の25%以下に低下すれば治癒と判定できますが、陰性化には数ヶ月~数年を要します。
カンジダ膣炎
カンジダ膣炎はカンジダ・アルビカンスやカンジダ・グラブラタという真菌(カビの一種)が増殖して起こる膣炎です。
もともとカンジダ菌は体内に常在する真菌ですが、膣内は通常乳酸菌が多く存在し、酸性環境を保っていてカンジダなどの真菌の増殖が抑えられています。しかし乳酸菌が減ることで膣内の酸性環境が崩れ、相対的にカンジダの増殖を抑える力が弱まり、カンジダ菌が増殖して膣炎を引き起こします。
症状はヨーグルト状と表現される白いおりものが増えることが特徴的です。このおりものとともに、外因部にかゆみが現れ、灼熱感(ヒリヒリした感覚)も伴います。また、確率は高くないですが、性交渉で相互に感染を起こすこともありますので、パートナーも同時に治療をすることが必要です。
HIV
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)はAIDS(エイズ、後天性免疫不全症候群)の原因となるウイルスです。
1990年代半ばまでは有効な治療法もなく、最終的に体を守る免疫系が破綻し、本来問題とならないような感染症によって亡くなってしまう怖い病気でした。
現在は感染後でも発症予防ができるようになっていてAIDS患者そのものが減少傾向である他、発症した場合でも副作用はあるものの、治療できる病気(ただし、現時点の医学では、原則的に一生治療を継続する必要があります)になっています。
ただし、ウイルスに感染しても症状はほとんどありません。病院に入院する際などには入院時採血で必ず検査が入りますが、そうでなければ、ご自身で検査をしていただかない限り気づかれにくいです。
Q HIVはどのようにして感染するのですか?
A 「彼氏の元カノの元カレの…」と続くACのCMを覚えておられるかもしれませんが、性交渉が主な感染ルートの一つで、性交渉をしたことのある人であれば誰でも感染リスクがあると言えます。
他に注射器の使いまわし(現在はほぼないはずです)や母子感染もあります。
直接感染者の体液(血液、精液、腟分泌液、母乳)が粘膜などの傷から入ることが原因になりますので、性交渉にコンドームを使用している場合は予防に有効です。
ちなみに、傷のない皮膚からは感染することはまずありませんし、汗、唾液、涙、尿、便などの体液には感染を引き起こすだけのウイルス量はないため、AIDS患者とキスをした、一緒に運動した、一緒に食事をしながら会話したなど、一緒に生活している(性交渉なしで)だけで感染することはありません。かつてはここに誤解があり、偏見や差別にも発展して社会問題になったこともあります。
B型肝炎・C型肝炎
ウイルス性肝炎を引き起こす肝炎ウイルスにはA型からE型までがあり、急性肝炎のみを引き起こすタイプと慢性化するタイプがあります。
慢性化した場合は肝硬変を経て肝細胞癌に至るリスクがあります。
日本で患者数が多いのはB型肝炎とC型肝炎で、ともに血液検査で感染の有無を確認することができます。
Q B型肝炎とC型肝炎はどのようにして感染するのですか?
A 現在わが国で感染するB型肝炎の多くは、出産時に生じる母子感染とされています。輸血や注射針の使いまわし等での感染もかつてはありましたが、現在ではほとんどありません。
現在増加しているのは、成人になってからの感染の場合はそのほとんどが性交渉による感染で、ほかに刺青(タトゥー)やボディピアス、医療機関での針刺し事故があります。
C型肝炎も輸血や注射針の使いまわし等での感染もかつてはありましたが、現在ではほとんどありません。こちらも母子感染や性交渉により感染しますが感染力はそれほど強くありません。
ただし、感染してしまうとC型慢性肝炎に移行しやすく、肝硬変や肝細胞癌に至る可能性が高くなります。
子宮頸がん検診
子宮頸がんの原因の95%はHPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスです。HPVは性交渉によって感染しますので性感染症の一つとも言えます。
Q 尖圭コンジローマとは何が違うのですか?
HPVによる性感染症では尖圭コンジローマが有名ですが、200種類以上が発見されているHPVの中でも、こちらは6型・11型などのローリスクHPVと言われるタイプに感染して発症するもので、癌になってしまうことは非常に稀です。
子宮頸がんの原因と言われるものは大部分はハイリスクHPVと呼ばれるものになります。
Q 子宮頸がんを予防することはできますか?
A 子宮頸がんは、(1)HPVの感染 (2)子宮頸部異形成 (3)子宮頸がん と段階を踏んで発症します。従って、その前段階で止めることができれば子宮頸がんを予防することができます。
最も有効で確実なのはそもそものHPVの感染を防ぐことです。感染を防ぐことができれば、ほとんど子宮頸がんは予防できることになるからです。
現在推奨されている9価ワクチンは、初交前に接種できていれば95%以上の確率で子宮頸がんを防げるとされ、普及が進んでいる国ではすでに子宮頸がんの罹患率が低下し始め、子宮頸がん撲滅への道筋が見え始めています。ワクチンの副作用が懸念された時代もありました(日本産婦人科学会は一貫して接種を訴えてきていましたが)が、様々な方向から検証が進んだ結果、現在は厚生労働省も安全性に問題なしとして接種の勧奨が再開されています。
ワクチン接種をしている場合でももちろん、接種していない・しない場合は特に重要となるのは子宮頸部異形成の段階で発見し、精密検査の結果、必要がある場合には手術による治療することになります(この段階では、異常の程度が軽ければ自然治癒するケースもあります)。そのためには定期的にがん検診を受診し、異常を早期に発見する必要があります。
検査で異常を発見できる確率は80-90%程度で100%ではありません。異常を見つける確率を上げるには頻度も重要になりますので、2年に1回は検診の公費補助がありますが、特に発症率の高い20-30代では1年ごとの検査が推奨されています。
ただし、検診だけで予防しようとする場合、低い確率ですが、何度か検査をすり抜け、いきなり癌で見つかってしまうことも全くないわけではありません。治療できると言っても手術が必要になったり、その結果、以後の妊娠で若干不利(流産・早産率の増加など)になってしまったりすることもあることを考えれば、やはり、可能な限りワクチンを接種されることをお勧めします。
また、治療した場合でも、再感染・再発の可能性は常にありますので検診は続ける必要があります。